あの海のむこう

こぼれないこと

憧れのお葬式のプレイリスト

わたしは自分のお葬式を素敵なものにするという目標がある。素敵なもの、というのは、祭壇が豪華絢爛であるとか参列者に偉い人がいるとか会場が特別大きなホールであるとか、そういうことでは断じてない。そもそも、お葬式に小さいも大きいもない。誰がどういう気持ちで来てくれているのか(心を込めて参列してくれているのか)が大切なのだと、今は思っている。

 

陽射しが差し込むあたたかな空間で、自分が本当に見送ってほしい人に心を込めて挨拶しに来てもらって、「ほんとにね‥」なんて、笑いながらも、少しさみしそうに思い出話に花を咲かせてもらうお葬式、考えただけで憧れが募る。サプライズなんかしてもいいかもしれない。棺桶の中からわたしの声が聞こえてくるとか。わたしがいつもつけてる香水が薫ってくるとか。精進落としとして、冷えたお寿司をつまんで、なんだかさみしい気持ちで胸がいっぱいになって、みたいな式も勿論、良いのかもしれない。でも、わたしは自分のお葬式は、あたたかいものとしてみんなの心に余韻として広がってほしいのだ。自分のだいすきなバンドのライブに行った帰り道の電車の中のように。あるいは、都会の小さな映画館で誰も知らない秘密の映画を見た夜の帰り道のように。

 

そんなわたしは「自分のお葬式で流したい曲」たちを頭の片隅で考えながら、日々過ごしている。2024年、20代半ばを迎える現時点でのプレイリストについて、いつかのわたしのためにここに記しておこうと思う。

 

https://open.spotify.com/playlist/1JHN998qIAanqCLmoFJaeV?si=msOALAB9RV6NxXZmZOulIg&dd=1

 

1「ばらの花」-くるり

「ばらの花」のあのイントロがだいすきなので、この歌で式が始まると思うと、言葉にならずとも、ただただ心がぎゅうっと軋む。そのときに「もう君に会えない あんなに近づいたのに遠くなってゆく だけどこんなに胸が痛むのは 何の花に例えられましょう」と流れてきたら、きっとその空間に漂うわたしの概念もしみじみしてしまうね。

 

2「春風」ーくるり

くるりふたつめ。「揺るがない幸せが、ただ欲しいのです」という始まりの歌詞も、なんだか人生の本質という気持ちでラストソングとして良い。あと、職業柄というのもあるけれど、わたしの言葉を誰かがどこかで思い出してくれてると嬉しい。「言葉をひとつひとつ探して、花の名前をひとつ覚えてあなたに教えるんです」。花は必ず毎年咲きます、ですね。「ここで涙が出ないもの、幸せのひとつなんです」別れのときに涙が出ないことさえも、どこかで肯定してくれる歌です。

 

3「リボルバー」 -ハヌマーン

この歌の好きなところは「死んでしまうことはとても恐ろしい 明日を真っ当に生きることの次に恐ろしい」と言い切っていること。暴力的な言葉もあるのだけど、その何にも忖度しない荒削り加減によって、グッと生きる背中を押してくれる。実は、この歌を聴いて、これを人生の終わりに流したいという思いが芽生えたので、お葬式で流したい歌のプレイリストを作りたくなった。そんなきっかけとなった、最初の1曲。そして、これをYouTubeで聴いていたとき(サブスク解禁前)コメント欄で「葬式で流してほしいくらい好きだ」という人を見つけて、同じ気持ちの人がいる‥!と感嘆した思い出。

 

4「死んだら骨」 -SUSHI BOYS

「皆 死んだら骨」というタイトルそのままの歌です。「死んで残せるのは、骨と人に作った自分の記憶」「骨だけになっても、その骨を大切と思ってくれる人が1人でもいればいい」と歌ってくれるのが、なんだかわたしの理想のお葬式論と重なるところがあり、好きな歌です。

 

5「完熟宣言」-シャムキャッツ

ハヌマーン、スシボと少し強めの曲が続いた後に、どこか懐かしさを覚えるイントロが流れてくる、言わずと知れたシャムキャッツの名曲。縁や出会いを大切にしていたとしても、ラストに挨拶ができない人たちもいる、だからこそ、「ここに何か付け足すならば、はぐれた仲間の声をステージに運んでちょうだい」という歌詞が最高です。シャムキャッツの曲のように、明るく前向きに完熟宣言をして終わりたいものです。

 

6「グッバイ来世でまた会おう」 -インナージャーニー

これほどお葬式ソングとしてぴったりな曲ある?と思ってしまうくらい、素敵なラストソング。さみしくなったり心配したりする必要はない、だって「グッバイ来世でまた会おう、君に会いに戻ってくるよ」。そして「時が経ってボロボロになっても、ただ年を取っただけで、いつもあの頃のまま」なんだから。

 

7「ケルベロス」 -相対性理論

2020年から、Spotifyの年間よく聴いたアーティストトップ5に必ず入ってる相対性理論の曲をアイデンティティとしても、ひとつはかけたいものです。どれもキャッチーで可愛い曲でほんとうに相対性理論への愛がぎゅーっとなってしまう曲ばかり。その中でも、ケルベロスは「輪廻 それは輪廻 君と輪廻転生したい」って歌詞が出てきて、ちょっとlast funeralぽいかなって思って選びました。

 

8「大丈夫」 -クリープハイプ

大丈夫じゃないときに、自分を大丈夫にさせる曲のひとつ。何度も何度もこの曲の「大丈夫さ」に救われた。特に「大丈夫、誰かに騙されても、あたしずっとずっとずっと信じててあげるから」というフレーズに心を掴まれたことは来世も持っておきたい事実です。

 

9「忘れないで 忘れないで」 -サンボマスター

「忘れないで キミがこの世からいなくならないでとぼくが祈ってること」「離さないで たとえこの身が滅んでもかまわない キミへの想いを残すのさ」って、お葬式で流れたら素敵、ただそれだけ。

 

10「漂流教室」 -YUKI銀杏BOYZカバー)

銀杏BOYZももちろん好きだけれど、この曲はYUKIのカバーで出会ってときめいたので、YUKIバージョンで。始まりの「告別式では泣かなかったんだ」は「泣かないこと」イコール「偲ぶ気持ちが足りない」にはならないことに気づかせてくれた、グッとくるフレーズです。そして、本当に本当にだいすきな「今まで出会えた全ての人々に、もう一度いつか会えたら、どんなに素敵なことだろう」という言葉。そう思える素敵な人間たちと生きている間に会いたいし、わたし自身も出会えた人たちに、そう思って生きていってほしいな、と定期的に思ってしまう、人生でも大事にしているフレーズ。

 

 

わたしは自分のお葬式を素敵なものにする、ということがわたしの人生の大きな目標である。だから、今ちゃんと、一生懸命生きようって日々思うことができる。自分のお葬式、のことを考えるのは、全く後ろ向きな話ではない。むしろ前向きに、素敵なお葬式にするために、周りの大事な人を大事にして生きようって思えるんだ。いつか、このプレイリストが流れる式が明るく開かれますように。